エメラルドとは
エメラルドは宝石の中で一番キズや内包物が多いといわれています。
エメラルドの原石であるべリルは無色の時はキズが少ないが、クロムやバナジウムという不純物が入った時グリーンとなり、それが結晶時に無理を生じさせ、キズや内包物を多くする原因となっているのです。
現在流通しているほとんどのエメラルドには「無色のオイルまたは樹脂」が含浸されていおり、「面キズ」と呼ばれる、内部から表面に出てくるわずかな亀裂にオイルや樹脂を浸透させてより美しく見せる「エンハンスメント」と呼ばれる、人為的な加工が施されております。この工程はサファイアやルビーにおける加熱処理と同様の物であり、何百年にもわたって行われていてとても一般的なものです。
エメラルドの中でも産地により評価や価値は様々で、その中でもコロンビア産エメラルドは、世界のエメラルド産出量のおよそ50%を占めており、良質で高価なエメラルドのほとんどはこの産地から産出されます。
コロンビア産エメラルドは各鉱山によって品質に特徴があり、さらに一つの鉱山の鉱区一つひとつにも特徴が見られるほど、その品質は多彩なものです。
コロンビア・ムゾー鉱山産
最高品質のエメラルドを産出する鉱山として知られております。特徴は濃いグリーンで柔らかな色味を持っております。しかし、その一方で低価値の石も多く産出されるため最高品質の1石となると産出量は僅か数%しかありません。
コロンビア・チボー鉱山産
ムゾー鉱山産に比べ、ややブルーがかったグリーンの色味で、内包物が少なく透明度の高いものが多いのが特徴です。
コロンビア・コスケス鉱山産
淡めのグリーンが特徴です。
エメラルドの歴史
エメラルドは数千年の長い歴史を持つ宝石で、ギリシャ語のスマラグドスから名づけられました。
1818年にその所在が確認された伝説のクレオパトラ鉱山(エジプト)では、古来、淡い半透明の品質のエメラルドを産出していたといわれています。
しかし16世紀の終わりにコロンビアのエメラルドがヨーロッパに持ち込まれてから、エメラルドの歴史は変わりました。メキシコからペルーにかけて広まっていた美しく大粒のエメラルドは、征服者であるスペイン人によって大量に本国に運ばれ、カボションカット、ビーズカット、彫刻などに細工されて、ヨーロッパ、トルコ、イラン、インドの王室に持ち込まれました。ヨーロッパでスパニッシュエメラルドもしくはペルーエメラルドと呼ばれていたものが、このコロンビア産エメラルドなのです。
コロンビア産エメラルドは柔らかな美しいグリーンです。ブルーもしくはイエローがかかっていますが、純色に近く、彩度を下げるようなグレイみを感じさせません。コロンビア産エメラルドのビューティグレードを下げる主な原因は、透明度の低下とキズの増加にあるといえます。またコロンビア産は原石の表面に色が溜まっているケースが多く、そこを残して研磨されます。そのために形(なり)の悪いものが市場に出回っていることを理解しておく必要があります。
色みについて他の産地と比較すると、コロンビア産のグリーンはクロム元素に起因し、ブラジル産やザンビア産のグリーンはバナジウム元素に起因しており、その違いがグリーンの色みの違いに出てくるのでしょう。
コロンビア産エメラルドの中でも特に美しい色をしているムゾー鉱山のものは、カシミール産サファイヤ、モゴック産ルビーとともに最も貴重なカラーストーンの一つですが、0.5~2カラットのジェムクオリティで比べるとエメラルドが最も高価です。また、素材の良い原石から研磨された美しく輝くラウンドブリリアントカットのダイヤモンドよりも高価です。